現実が思い出
三島:過去なんですよ。それはお能とぴたりあうんです。お能は、ドラマがみんな終っちゃったところからはじまるでしょう。現に進行していることは、みんな過去なんですからね。いま僕が美しいとお能の舞台で見たものは、とっくに死んだ昔の恋物語ですから、そこに存在するはずがないんですよね。お能には、そういうトリックがあるんですね。普通の西洋の芝居は現在目の前で見て美しいと思うものは、現在進行しているという、そういう約束の上に成り立っているでしょう。東雅夫編・三島由紀夫作「三島由紀夫怪異小品集-幻想小説とは何か」2020年 より。少し前に高原英理著「月光果樹園」を読んだばかりで、なんだか稲垣足穂ついている。
澁澤:そうすると、そういうところに稲垣さんの文学も生きているわけですね。
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