死霊婚と女性婚

死霊婚は、未婚の男性が死んだ場合彼の名義で婚資が支払われ、正式に花嫁を娶る制度である。死者のために婚資を支払い、実際に花嫁と暮し、彼女の産む子供の生物的父となるのは死者の父系近親者などであるが、生れてくる子供は死者を正式な父親とする。女性が自分の名義で婚資を贈れば、女性であっても花嫁を娶り、花嫁の産む子供たちの正式な父となる。このようにして正式な父になる女性は不妊症であることが多い。花嫁は婚資を支払った女性が認めた男性と性関係を持ち、子供を産む。婚資を支払った女性は、社会的にも男性として活動し、子供たちには父と呼ばれ、父系の系譜に男性として語り継がれる。彼女が呪術師や占師として富裕であれば、数人の妻を娶ることもある。このような結婚をエヴァンス=プリチャードは女性婚と名付けた。死霊婚も女性婚もヌエル社会では異例なことではない。
これはスーダンのヌエル社会の話。田中雅一/中谷文美編「ジェンダーで学ぶ文化人類学」2005年 より。514HQTW1MCL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg
死霊婚はアフリカだけでなく、日本、韓国、中国などでも知られている。女性婚については村田喜代子の傑作小説「雲南の妻」が有名。

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