量子論の世界

カルロ・ロヴェッリ著「世界は「関係」でできている-美しくも過激な量子論」よりの抜書き。
私たちが見つけた最良の現実の記述は、出来事が織りなす相互作用の網の観点からなされたものであり、「存在するもの」は、その網のはかない結び目でしかない。その属性は、相互作用の瞬間にのみ決り、別の何かとの関係においてだけ存在する。あらゆる事物は、他の事物との関係においてのみ、そのような事物なのだ。

空の星を見ているわたし自身は存在するのか。いいや、私も存在しない。では誰が星を見ているのか。誰も見ていない、とナーガール・ジュナはいう。星を見るということは、私が慣例に従って「自分」と呼んでいる相互作用の集りの一要素なのだ。「言語が文節化しているものは存在しない。心の及ぶ範囲は存在しない」。わたしがいるといことの芯になる本質、理解すべき謎に包まれた究極の本質は、存在しない。「わたし」は、互いに連結し合う膨大な現象が構成する総体でしかなく、それらは互いに依存し合っている。かくして、西洋に於ける何百年にわたる主体や意識の本質を巡る思弁は朝霧のように消えてしまう。

精神の本質に興味を持つ人間とって内観は最悪の研究手段であり、自分自身の思い込みを探し回って、その思い込みに溺れることになる。
images.png
------著者はイタリア生れの理論物理学者で「ループ量子重力理論」の提唱者の一人。「すごい物理学講義」で「メルク・セローノ文学賞」「ガリレオ文学賞」を受賞。「世の中ががらりと変って見える物理の本」は世界で150万部を売上げ、「時間は存在しない」はタイム誌の「ベスト10ノンフィクション2018年」に選ばれるなど、著作はいずれも好評を得ている。(巻末の著者紹介より)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック