マイノリティの歴史は忘却される。

ウポポイのそれなりの賑わいとは対照的に、徒歩圏内の慰霊施設に訪問客が一人もいないのは、その歴史的背景についての記述が展示にはなく、パンフレットの地図に場所が記載されていないからではないか。
遺骨の遍歴を辿ると、その多くは北海道大学に行き着く。その現場を案内してくれたのは、同大学の「アイヌ・先住民研究センター」の石原真衣さんだ。センターから歩いて10分弱、医学部の駐車場の一画にひっそりとたたずむ古い小さな建物が遺骨の保管場所だったという。まだ数体の遺骨は残っているらしい。だがここも、キャンパスマップには載っていない。マイノリティの歴史は忘却される。
斎藤浩平「ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた」KADOKAWA 2022年 より。
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うちに閉じこもらずに、他者に出会うことが、「想像力欠乏症」を治すための方法である。だから、現場に行かなければならない。(「学び、変わる 未来のために あとがきに代えて」より)
理不尽に立ち向かう人、困っている人、明日の世界のために奮闘する人――統計やデータからは見えない、現場の「声」から未来を考える。

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