九九の稽古

 永井義男著「江戸の生活ウラ事情-衣食住から格差社会の実像まで知られざる江戸の意外な素顔」2009年を読んでいたら、天保14年の「桑名日記」を紹介する記事があった。その中で、8歳の子供が九九の稽古をしながら寝たという記事を紹介していた。
 わたしは九九は明治から始まったとばかり思っていたので調べてみた。

以下は日経新聞の記事よりの抜粋。
「九九の発祥の地は漢の時代の中国」と話すのは日本の数学教育史に詳しい三重大学名誉教授、上垣渉さん。時期は紀元前2世紀から1世紀頃であると思われる。中国の北西部で発見された竹簡は「九九八十一」から始まっている。ここに「九九」という名の由来がある。
 「日本への九九の伝来は飛鳥時代と推測される」(上垣さん)。奈良時代の歌集「万葉集」に、九九の声が和歌に織り込まれている例を挙げる。「二八十一不在國」と書いて、「ニククアラナクニ」と読ませる歌がある。八十一を「くく」と読ませて「二八十一」を「憎く」とする言葉遊びだ。  
 現在のように教育の現場で九九が登場するのは平安時代だ。970年、貴族の子弟の教育に使われた暗唱用教本「口遊(くちずさみ)」が記された。「勉強に飽きると、遊び出したり、歌をうたい出したりする7歳向けの子に家庭教師が教本を作った」(上垣さん)
 かけ算九九は積を覚えるのに対し、割り算九九は商と余りを覚える。珠算史研究学会の会長、太田敏幸さんは「混乱しないよう、先に唱える数字が大きいものを割り算九九とした」と説明する。
 九九が一般庶民に広く伝わるようになるのは江戸時代だ。寺子屋などで「読み・書き・算」が教えられる。「算」はそろばんによる四則計算だ。江戸時代の有名な数学書、寛永4年(1627年)初版の「塵劫記(じんこうき)」にもかけ算九九と割り算九九は載っている。
 九九が転換期を迎えるのは近代的な学校教育が始まる明治5年(1872年)。富国強兵を目指す明治政府は学校教育では西洋の算術、筆算を採用し、そろばんを用いた珠算は使われなくなった。
 
 九九がこんな昔から使われていたとは!
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